WEBメディア
モニタリングとは
広報・PRに関わる人にとって、避けて通れない業務がモニタリングです。2019年の調査では、広報・PRに関係する企業の75%が「モニター・クリッピング作業」を扱っています(公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会『2019年 PR業実態調査報告書』)。
ここでは、モニタリングとはそもそも何かという基本的な部分から、それが必要な理由、難しさ、そしてその解決方法としての外部サービスを、WEBメディアでのモニタリングを中心に解説します。
広報・PR担当になったばかりの方や、広報・PR業界に興味のある方にぜひおさえてほしい内容です。
目次
- 1.モニタリングの基本知識
- モニタリングとは
- モニタリングの方法
- 2.なぜモニタリングをするのか
- モニタリングが必要な理由
- 何をモニタリングするのか
- 危機管理広報とモニタリング
- 3.なぜモニタリングは大変なのか
- 量の問題
- 時間とタイミングの問題
- 効果測定の問題
- 4.モニタリングサービス導入という解決策
- 3つのメリット
- デメリット
- サービス選びの3つのポイント
- 5.まとめ
1モニタリングの基本知識
モニタリングとは
モニタリングとは一般的には「監視」という意味ですが、広報・PRでは「特定の話題がメディアに出ていないか見張ること」と言えます。
よく似たことばに「クリッピング」があり、厳密に使い分けられてはいないようですが、こちらは「特定の話題を含んだ記事を集めて保存すること」というニュアンスのようです。
「記事になる前から見張る」行為がモニタリング、「出てきた記事を集める」行為がクリッピングと言えるでしょう。
モニタリングの方法
モニタリング・クリッピングは、もともと新聞・雑誌などの紙媒体で記事を探し、切り抜くかたちで行われてきました。報道におけるWEBメディアの存在が大きくなってくると、キーワードで検索して記事を探し、URLなどのデータを収集・保存するという方法が生まれました。後述するように、近年では「ソーシャルリスニング」というかたちでSNSの投稿も対象に加わっています。
2なぜモニタリングをするのか
モニタリングが必要な理由
広報・PRの基本業務と言われるモニタリングですが、どうして必要なのでしょうか。 日本パブリックリレーションズ協会は、PR(パブリックリレーションズ)を「ステークホルダーおよび社会との間で健全な価値観を形成し、継続的に信頼関係を築くための活動」と定義し、「その中心となるものは、相互理解と合意形成、信頼関係を深めるためのコミュニケーションである」としています(日本パブリックリレーションズ協会倫理綱領)。
なお、ステークホルダーは「ある組織の目標達成に影響を与えることができる、もしくはその影響を受ける集団または個人」と定義されます(R. Edward Freeman, Strategic Management: A Stakeholder Approach)。企業にとっては株主、従業員、取引先、地域社会、さらにはメディアと、メディアを通じた情報を得て株主や顧客となるかもしれない人たちです。
情報を発信するだけではコミュニケーションになりません。発信した内容がどのように伝わっていて、どう評価されているかを知り、活動にフィードバックしなければいけません。そのためにモニタリングが必要なのです。また、企業であれば他社は何をしていてどう評価されているか、そして自分たちが関わる業界で何が起きているかも知っておく必要があるでしょう。
何をモニタリングするのか
モニタリングする内容は、具体的に何があるでしょうか。Qlipperの色々な使い方は別ページでご紹介していますが、一般的な例をあげておきましょう。
- 自社およびサービスの名前
- 競合他社およびそのサービスの名前
- 関連業界にまつわるニュース
- プレスリリースの転載とその反響
- 会見、取材、イベントの記事化
危機管理広報とモニタリング
モニタリングはクライシス発生時にも必要とされます。
不祥事を起こした企業には、事件の背景やその後の予防策などを発信する責任があり、社会の行動はその情報の内容に応じて決まります。
不祥事が発覚してもその企業がもつ商品の品質や技術が損なわれるとは限りませんが、報道を通じたイメージダウンによる売上の低下は懸念されます。逆に好意的に受け取られるのは再発防止策の発表のような企業イメージを回復させる情報であり、その対応の迅速さも鍵となります。
したがって、メディアがどのように報道しているか、それに対してどのような反応が起きているかをモニタリングするのです。
また、ネット上のいわゆる「炎上」や「バイトテロ」といった事態が起きるときには、SNSに書き込まれた企業への批判、悪質な誹謗中傷、身内向けの悪ふざけがマスメディアに取り上げられて拡散するというパターンがあります。ここでもメディア情報の速く正確な把握が対応の鍵となるのです。
3なぜモニタリングは大変なのか
「モニタリングが必要なのはわかったけど、実際にやるとなると大変そう……。」
そう思った方のために、モニタリングが難しい作業となる要因を整理してみましょう。
量の問題
世の中に流通しているすべての情報を処理することは不可能ですが、見る範囲をニュース記事に限定しても同じことです。とりわけWEBは膨大な情報を蓄積していて、ニュース記事の数も流通の速度も紙媒体を遥かにしのぎます。
こうした状況では、見るべきメディアと摂取する情報を取捨選択しなければいけません。でも、その基準はどう決めればいいのでしょうか。
時間とタイミングの問題
途方もない量のニュース記事の中から自社に関わる情報を選び取れたとしても、その作業だけに1日何時間もかけてはいられません。また、広報・PR業務の一環として毎朝、経営幹部や関係部署にピックアップした情報を提供している人も多いでしょう。朝の忙しい時間に、決まったタイミングに合わせてニュースを集めて精査するのは難しく手間のかかる作業です。
しかし、広報・PRとして本来やるべきことはそうしたルーティンワークだけでなく、情報の発信と分析、そしてコミュニケーション戦略の策定であるはずです。
また、情報の流通・拡散が速いWEBメディアでは、クライシスに関わるような重要な情報があれば、把握の遅れは致命的な結果を招きかねません。だからといって、広報・PR担当者が常時WEBサイトを見張ることなどできません。
効果測定の問題
集めた記事の分析をする余裕をつくれたとしても、記事ごとの重要度とその効果を評価するのは難しいところです。ある調査では、広報担当者の悩みとして「広報活動の効果測定が難しいこと」が最も多くあげられています(PR総研「PR・広報業務に関する実態調査」2013年9月)。 記事の量が多いほど効果があったと考えていいのでしょうか。また、紙媒体の場合は掲載ページや記事の大きさを数字で把握できますが、WEBメディアではその記事がどれほどの大きさ、プライオリティで扱われているかはなかなか確認できません。
4モニタリングサービス導入という解決策
以上の問題を踏まえると、外部のモニタリング・クリッピングサービスを導入するという解決策が考えられます。
3つのメリット
こうしたサービスを利用するメリットは、大きく3つあります。
- 情報を幅広くたくさん入手できる
- 作業にかかる手間と時間を節約できる
- 効果測定の指標を使うことができる
デメリット
残念ながらデメリットも存在します。最大のものが予算の問題です。
先にも触れた調査では、広報・PR担当者の悩みとして2番目に多かったのが「広報のための予算が少ないこと」でした。
国内にモニタリング・クリッピングのサービスは複数存在します。しかし、限られた予算の中で、こうしたサービスに料金を払うことへ二の足を踏む方もいるでしょう。
サービス選びの3つのポイント
モニタリング・クリッピングの外注やツール導入に取り組もうとしたとき、何を基準にすればよいかは悩みどころです。
判断するポイントとなるのは「対象」、「内容」、そして「費用」です。
対象から判断する
WEBメディアのモニタリング・クリッピングをする場合、対象は大まかに2つに分けられます。「ニュースサイト」と「ソーシャルメディア」です。
前者は新聞・雑誌、またはWEB独自のメディアが記事を執筆し掲載するサイトや、そうした記事を転載するポータルサイトなどです。後者はブログやSNSを指し、とくにこちらのモニタリングを「ソーシャルリスニング」と呼ぶこともあります。
片方に特化して専門性を売りにするサービスも、両方を調査対象にしていて包括性をアピールするサービスもあります。後者の場合、実際はニュースとソーシャルのどちらが主軸なのかが判断材料になるでしょう。
また、ニュースサイトの場合、収集対象サイトが多ければよいとは限りません。情報を取捨選択するためにモニタリングサービスを導入するのに、見る人が極端に少ないサイトに転載されただけの記事を報告されていたら、本当は重要だった記事が埋もれてしまいかねません。記事数に課金するタイプのサービスであれば、そうした記事にも料金が発生してしまいます。
また、対象サイトの数と収集の精度は関係がありません。国内の調査なら、日本語のサイト・記事に特化したサービスを選ぶ方がよいでしょう。
内容から判断する
WEBメディアのモニタリング・クリッピングサービスの内容は2種類あると言えます。
- あらかじめ設定したキーワードでヒットした記事を収集していく、モニタリングツールのサービス
- 指定したテーマで集めた記事を目視で確認し、不要な記事を取り除いて報告する調査会社のサービス
なお、どちらのタイプでも多くが「広告換算」のような効果測定の指標を備えています。
モニタリングツールはごく単純な単語の組み合わせで検索するため、手軽に始められます。ただし、その分カスタマイズの自由度は低く、キーワードを追加していかないと十分な結果が得られない傾向があります。
調査会社は検索していったん収集した記事を目視で確認してくれるので、複雑な内容でも高精度に記事を探してくれます。しかし、調査の内容や必要な記事の基準を細かく指定しなければならず、また人が記事をひとつずつチェックしていくために時間がかかり、タイムリーな報告は難しいようです。
費用から判断する
一般的に、モニタリング・クリッピングサービスの価格は調べるテーマかキーワードの数で算出されます。価格設定はそれぞれですが、モニタリングツールより調査会社の方が高価になることが多いようです。
ただし、モニタリングツールでは基本料金の類が安く表示されていても、精度や利便性を高めようとすると課金してキーワードやオプションを追加する必要が生じます。また、新たな調査を始めるごとに基本料金が発生することもあります。
記事の目視確認を行う調査会社の場合は、そうしたオプション追加に加えて記事ごとに課金されるため、より高価格帯となります。
5まとめ
モニタリングは広報・PRに必須の業務であり、WEBメディアが増え続けている今、その必要性もより増しています。
しかしここまで見てきたように、それを広報・PR担当者が自ら行うには困難が多く存在します。解決策として専門のモニタリングサービスを導入することをおすすめしますが、そのそれぞれにメリット・デメリットがあるのも事実です。自社が求める「対象・内容・費用」の観点からどのようなサービスを選ぶか検討してみてください。
なお、私たちのQlipperはこうした状況を踏まえて、WEBメディアのモニタリングにまつわる問題を解決すべく開発・運営されています。
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